
ALT ##【お化けとお菓子】 「徳利おあー焼き鳥」 「それを言うなら、トリックORトリートね」 玄関先の伊之助さんは私の訂正も気にする事なく、機嫌良さそうに立っている。こんなやりとりを何回やってきただろうか?連絡もなく突然の伊之助さんの訪問に慣れている自分が居る。それは私の姿がパジャマだろうと、よれた普段着だろうとそんな事を気にしない伊之助さんの性格もあり、当初の恥ずかしさはどこかに行き、諦めが半分ともう半分が呆れと言ったところ。 「また随分と連れて来ちゃいましたね」 「?」 家に招き入れながら、伊之助さんの背後に居る|アレら《・・・》をちらりと見る。目線が合いそうになり伊之助さんに視線を戻すと不思議な顔を向けられながらも、靴を脱ぎ始めた。 歩くだけで、全ての人類を卒倒させるだけの美貌を持つこの男、嘴平伊之助は平平凡凡な私の家によくソレらを連れてくる。所謂生き霊っていうやつだ。この世のものでは無いナニか。私は小さい頃からお化けが見えていて厄介なものであった。 そんな私の事情を知らない伊之助さんは玄関に入ると複数あった黒いもやは静かに消えていく。これも玄関のシューズボックスの下の隙間に盛り塩をしているおかげであろう。だけど、執着の強さが関係しているのか、消えてくれない事がある。もやが薄くなり盛り塩の効果は無いということでは無さそうだけれど、目を凝らせばシルエットが見える程度で伊之助さんの肩にしがみついたままでいる。 私に害はないものの、もやの様な人影が気味が悪いのはどうしようもなく、伊之助さんにまとわりつき気を吸い取っている様に見えて心配になる。当の本人は気を吸われても元気が余り有るのか一切の不安はないみたいで全然平気そうだ。それどころか私と居るのが気に入っている。まあ、それもそうだろう。私の家に来たらどっしりとした重いしがらみが不思議と軽くなるのだから。私と居て楽しいと思ってくれるのは嬉しいし、頼ってくれる存在であることは今までお化けが見える私の苦労もこのためにあったんだと思えるようになり少し気が楽になった。イケメン過ぎるのも大変なものだななんて思いながらニコニコの笑顔を向ける伊之助さん。そんな顔を見せられるとどうしても甘やかしたくなるのは伊之助さんが可愛すぎるせいだからと自分に言い聞かせている。

ALT 「来るだろうと思って沢山用意しましたよ」 「伊之助さん離sー」 「アオイも食べねえの?」 私の言葉を遮ると距離が更に近くなる。こんな事、何とも思わない女の人たちにやっていたのだとしたら、とんでもない天然の女たらしだ。ちりっと胸の奥で痛む感情に気が付かないふりをする。 「私は、もう、味見した時に食べたので…」 「いっぱい作ったんだろ?一緒に食べようぜ?」 「いや、でも…」 「ほら、食え」 伊之助さんはモンブランの上に乗ったマロングラッセを向けて、私の口へと押し込む。 「ん…」 給餌された小鳥の様で恥ずかしくなりながら咀嚼する。 「ダメですよ…こんな事したら。男女問わず勘違いされてしまいますよ。」 「?誰これそんなのしねえし、勘違いされてえのはアオイだけだけどな」 「は?」 とんでもない爆弾発言に頭がフリーズする。 「クリームついてるぞ」 指摘され、クリームまで付けた間抜けな顔を晒し慌てる私とは逆に伊之助さんは冷静だ。きっとからかわれているだけだ。いい加減に手を解放してくれないだろうか。空いている左手でひっぱ叩いて目を覚ませてやろうかと怒りがこみ上げてくる。 掴んだ私の手首を見、次に持っているモンブランに一瞥をして何かを閃いたのか悪い顔をした伊之助さんは顔を近づけて私の口を舐め始めた。 「ちょ、!」 言葉を発した隙に口内の侵入を許してしまう。 優しく荒い口付けに脳が溶けそうだ。ちゅっちゅと室内に響くリップ音が更に恥ずかしさを極めるが離し難い快楽に溶かされていった。 ふわっと優しく押し倒されば空いていた私の左手は伊之助さんの胸を支えて、これから予想出来る事に抵抗しているのか服を握り締めて懇願しているのか分からないほど頭がふわふわとしている。 伊之助さんは膝立ちになり、服を脱ぐと鍛えあげた上半裸が出てきた。 ふと何かに気づき、伊之助さんはいきなり後ろを振り向くと、 「ちっ…うぜええなあ、まだいんのかよ…邪魔すんなどっかいけよ!くそが!」 と、聞いたことのない低い声に意識が正気に戻る。部屋の隅を見れば、もはやすっと消えていった。 「え、伊之助さん?」 「…ミエテナイヨ」 視線が泳ぎ、カタコトの発言に確信した。この人は見える側の人だ。それならば対処法も知っている筈で、態とわたしの家にお化けを連れてきていたという事。

ALT 「伊之助さん?」 声を落とし、静かに怒る。打って変わって小さくなる半裸の男は正座をして震えている。思った事は何でも口にしてしまうのに珍しく言葉を詰まらせていて観念したのか、ボソボソと語り始めた。 「初めはアオイん家に行く口実が欲しくって…すぐ止めようと思ったんだ!でも、女の影に妬いてるアオイが可愛くってつい」 「っ!?」 ひた隠しにしていた私の想いも感じ取っていたのかなんて自分は間抜けなんだろう。 何だか頭痛もするがなんとなくむず痒い嬉しさがあるのも本当で、この後どうしようというこの状況。 「もう知らない!」 膝を抱えながら、伊之助さんの食べかけのモンブランをやけ食いしていく。 「ゴ メ゛ン゛ナ゛サ゛イ゛」 伊之助さんは私の服の端を握り、この世の終わりの様に嘆いているのを無視していく。 「自分で作ったものだけど、美味しいい!」 「お、俺の分は…?」 「…あると思います?」 「…ハイ、ゴメンナサイ…」 大量に作ったモンブランとカボチャのプリンを私一人で食べれる訳も無く、食べてくれなければ困る。意趣返しに少し意地悪をして少し気が晴れる。 イタズラにしてはやりすぎの二人のハッピーハロウィン












































